研究

今月の特集

Acoustic impedance microscopy





生命機能科学研究室の研究


2011.May

Enzyme-linked photo assayについて


神経組織や細胞は、情報伝達のための化学物質や生理活性物質を放出しています。細胞が生きた状態で、放出される物質の時間的・空間的分布を観察するために、私たちは酵素反応を利用した光測定法を開発しています。

■酵素を用いた物質分布測定

酵素は生物が用いている触媒(化学反応の進行を助ける物質)で、多くはタンパク質からできています。タンパク質はアミノ酸が鎖状に結合した構造を持っているため、アミノ基(-NH2)で終わる端:N末端とカルボキシ基(-COOH)で終わる端:C末端があります。また極めて基質特異性が高く、特定の分子を選択して反応します。

酸化還元酵素は、電子の受け渡しのために、補酵素にニコチンアミドやフラビンモノヌクレオチドを要求します。これらの補酵素は反応の前後で特定の蛍光を示すことが多く、この蛍光を指標に物質の分布を測定します(図はGlutamate dehydrogenase from PDB)。

■反応酵素の固定化

シラン化剤を用いて、伝達物質と反応する酵素をガラス表面に固定化します。

酵素が伝達物質を分解すると、同時に反応した補酵素が蛍光性の分子に変化します。伝達物質が放出された部位で蛍光分子が発生するため、放出の空間分布が観察できます。さらに、蛍光の寿命は短く、拡散性が高いため、時間的な変化を見ることができます。

■補酵素による蛍光反応

補酵素の存在によって、伝達物質と酵素の反応がはじまり、蛍光分子が生成されます。これを励起することで、伝達物質が放出されている場所に蛍光が現れます。映像では小脳皮質からの伝達物質グルタミン酸の放出を観察しています。(QuickTimeでご覧ください)

Reference:
GABA imaging in brain slices using enzyme-linked photo analysis
Morishima T., Uematsu M., Furukawa T., Yanagawa Y., Fukuda A., Yoshida S. Neuroscience Research 67 (2010), pp. 347-353